校長通信
ゆくて遥かに
校長通信

2024年12月12日

第320号 2学年研修旅行の感想文より

 年末になって参りまして、今週は面談週間のため1・2年生は半日授業となっています。担任の先生方により日程や方法等が異なりますが、お忙しい中ご都合をつけていただいてご来校いただいている保護者の方もいらっしゃるかと存じます。ありがとうございました。

 3年生は共通テスト直前の特別時間割により、本番を想定した演習形式の授業が展開しています。つい夜遅くまで勉強して朝起きられなかったり、体調を崩すなどして出席できない方もいらっしゃるのかもしれませんが、この演習及び解説を聞くことが、直前で力を伸ばすための近道でもあります。本番に備える意味でも、そして、体調を維持する上でも朝決まった時間に起床して、冷たい風の中ではありますが頑張って登校し、仲間とともに向かう。そのことが、心強く目標に向かい、自分を律する王道のやり方であると私は考えています。頑張りぬきましょう。

12/8 中信新人戦女子バレー順位決定戦、対大町岳陽戦、残念ながら3セット目追いつけず。
12/8 中信新人戦男子バレー準決勝、対松本国際戦、タイムアウトで確認

2学年研修旅行のご報告(感想文のまとめ)

 校長通信315号、316号にも掲載させていただきましたが、去る10月23日~25日にかけて、本校2学年の皆さんが関東方面(東京を中心に、横浜、舞浜、筑波までの関東エリア)への研修旅行に行ってまいりました。その行程と訪問先、様子については生徒作成のブログに掲載されておりますので、そちらをぜひご覧ください。私のダラダラした文章よりも端的にまとめられていて、読んでいて快適です。

今回は2日目の企業見学について2名の方々の感想文を、そして次号では1日目の大学見学についての感想文を掲載させていただきたいと思います。

【三菱ケミカル】「KAITEKIを通じた世界」 2-2 宮坂 優希菜

 三菱ケミカルグループはガス、化学、製薬の3つの分野に進出している企業である。総売上は6兆円をあげ、総従業員数66,000人をかかえており、44カ国に発展している。私はサイエンスイノベーションセンターの見学をした。このセンターは100棟の建物から成り1000人強の従業員がここで研究等に従事している。この建物は自然との融合などの観点から2023年にグッドデザイン賞を受賞している。つまり、生産物が本来の環境を破壊せず融合するための方法をセンターの建物で具現化したということだ。化学を利用することで副産物を最小限にし主産物を最大限に引き出すことをよく表していた。

 そんな三菱ケミカルのグループ理念は「KAITEKI」である。「KAITEKI」とは人々と地球の心地よさであり「KAITEKIの実現」とは環境、社会、テクノロジー、ビジネスニーズのバランスを達成することとしている。このKAITEKIを次世代まで持続させるために様々な取り組みを行なっている。そのひとつがおにぎりアクションというプロジェクトでおにぎりを投稿することで食べ物に困っている子どもたちに5食分の給食が届くというものだ。世界各国の人々がこのプロジェクトに参加していて投稿数は13万件を超えている。このプロジェクトに参加している主な国は日本、そして意外なことにブラジルだった。第二次世界大戦後日本からブラジルへ移民が送られ、日本文化がある程度定着していることが理由だという。製薬以外の面でこのように取り組みをすることができるのは企業として多方面にチャレンジできる資本がありまたそれが安定しているからであると感じた。

 続いて研究員の方のお話をお聞きした。薬の開発には約16年もの年月が費やされ、その過程も長い。まず医薬品治療の標的分子を治す候補物質のタネを見つけそのタネを合成する。それをもとに薬の候補である試薬を作って実験動物で試し効果や安全性を調べたのち人で試す。臨床試験と治験を繰り返し、安全性と効果を十分に確認した上で承認されるという。医薬品開発の成功確率は約1/25000ととても低い。現在ではデータ駆動型のAI創薬も進められているといい、医療の現場でAIが使われる場面はそんなにないと思っていたがそれを聞いてAIが将来の日本を形作るのかもしれないことを再認識した。研究の過程のひとつで分析があるのだが、分析が重要視される理由は立体構造によって生理作用が異なることや立体規則性によって融点が異なることが挙げられる。また、その分析結果は営業の一つになったり研究開発に役立てられたり、学会や論文で発表したり知的財産として扱われたり、結果を元に製造されるという。私たち高校生がこれからすべきことについてもお話をしてくださった。その中で私が特に参考にしたいと思っているのはなりたい姿を具現化して選択肢を広げながら自分のキャリアを逆算計画を立てて見通してみることと方法や技術にこだわりすぎず目的志向で物事に取り組むことだ。自分のなりたい姿を具現化することは将来の自分を見つめ直し、逆算計画を立てて今自分がやるべきことを着実に進めていくことができると思った。特に自分は学びたい分野や就きたい職業が定まっているためより将来を具現化することができると感じた。そんな研究者の方たちからお話をお聞きして薬剤師として三菱ケミカルの社員としてのやりがいは各分野のエキスパートたちと仕事をして健康に貢献できることや人の命を救うことができることだと言う。海外メンバーとも仕事をするこの会社では英語が必須でさらに英語でコミュニケーション能力が高い人たちが一緒に仕事をしていると言う。さらに生物学、化学、英語といった薬学に関係がありそうな分野だけでなく、これからの時代を見据えて情報学に着目し勉強した方もいた。これらの話をお聞きしてこれからの薬剤師に求められるのは仕事が早くて丁寧といったAIが取って代わってできることではなく、コミュニケーション能力を日本語でも英語でも高めてグローバル化が進む世の中に対応することやAIを活用して省ける手間を省略して人工知能と共存しながら開発することであると考える。私自身情報は共通テストのみで使うものと認識しそのためだけに勉強しようと考えていたが、今の時代薬学を追求する立場になった際に情報学が必須になることが確実視されていて、現在もその方向に進みつつあるのだから将来を見据えた勉強をしていくべきだと考えた。

 今回の研修旅行を通して自分の目指したいキャリアがより明確になりつつあり、そのための道筋を探す段階に入ったと感じたから日々の生活の中で将来に向けて準備をしていきたい。

研究員の方の話を聞く
東大の医科学研究所で研究室の様子の説明をうかがう
つくば国土技術製作総合研究所 施設内にある28度の傾きの世界

【出光興産】 「知ることで広がる」  2-2 鈴木 寧々

 2日目、私は出光興産さんへお邪魔しました。研修旅行で行くことが決まる前は「ガソリンスタンドの会社」「エネルギーについてのCMを見たことがある」くらいの認識でした。ですがこの1日でその認識が大きく変わりました。

 まず最初に千代田区にある本社へ伺いました。大きな会議室のようなところへ案内していただき、そこで会社について、取り組みなどについてのお話をお聞きしました。(後に気づくのですが、会議室のようだと思ったところは社員さんの食堂でした!)出光興産は石油業界では売上2位、日本企業の中でも14位と知ったときは「だからガソリンスタンドのイメージが強かったのか」と納得しました。また、「電力・再生エネルギー」「燃料油」「資源」「基礎化学品」「高機能材」の5つを主軸としているともおっしゃっていました。この中でも特にこの日私が学んだ「高機能材」について。有機ELというのはゲームの液晶などに使われるのですが、特に出すのが難しい青色を出すことに成功し、「出光ブルー」という名前がつけられているそうです。また、機能性飼料というものも取り扱っており、カシューナッツの殻を使うことで牛のゲップに含まれる二酸化炭素の量を減らすことができると聞き、本当に驚きました。また、企業理念についてのお話もお聞きしました。出光興産さんの企業理念は「真に働く」。経営の原点は「人間尊重」だそうで、これは人のことを大切にしようという意味だけではなく、人間=自分、尊重=自分が尊重される人間になる、という意味も込められているそうです。

 会社の中を案内していただきながら、社員さんの働き方についてのお話もお聞きしました。出光興産さんには労働組合がないのだと説明していただきました。その代わりに社員会というものがあり、社員の方から意見や要望を聞いて偉い人に提案したりするのだそうです。労働組合と社員会の違いについて、労働組合は社員同士がお金を出し合って結成し、会社と対立することが多いのですが、社員会は会社をよりよくするために会社がお金を出して作ったもので、そういう組織だからこそ会社と対立することはないと言います。また、お話をお聞きしている中で非常に自由な働き方ができる会社だと感じました。仕事が滞りなくできれば在宅勤務も可能。服装も自由。仕事場所も一応部署はあるがフロアが異なるフリースペースなどで働いてもOK。副業もOK。歴史があり、尚且つ新しいことをどんどんと取り込むからこそとても大きな会社なのかなと思います。社内を見学させていただいて、社員さんがみなさん明るいと感じました。オフィスで仕事なさってる方も、お昼ご飯を食べている方も、エレベーターで会った方も。お昼ご飯は長野県出身の社員さんや説明をしてくださった社員さんとお話をしながらお弁当をいただきました。会社のことだけでなく趣味の話や、その趣味が仕事につながった話など、インターネットで調べただけでは絶対に知ることができない貴重なお話をお聞きできました。

 次に私たちは少し場所を移動し、私たちが訪れた10月24日からお客さんの受け入れを始めたヒューマンギャラリーにお邪魔しました。そこは出光興産の歴史を、文で読んで、映像や模型・実物で見て、声を聴いて知ることができる場所でした。特に私が深く知ったのは出光興産の創業者である出光佐三さんについてです。佐三さんは父から「一生懸命働くこと」「ぜいたくを慎み、質素を旨とすること」「人のために尽くすこと」を教わり、出光興産のスタートである出光商会の資本金を出資した日田重太郎さんは佐三さんと「金をもらったことは誰にも話さない」という約束をしたそうで、このことから「陰徳」の尊さを学んだそうです。何か物事をなす人は(例えば経営が得意など)ただ単に何かに優れているだけでなく、様々なことから吸収し、それを人生に生かすことができる人なのかなと感じました。

 この1日で出光興産、働き方、そして出光佐三さんについて深く学ぶことができました。本当にありがとうございました。

会社の説明をうかがう
JAXA相模原キャンパスの見学
SUBARU本社での見学