第298号 芸術鑑賞と学年行事
昨年市民芸術館で実施された音楽集団による芸術鑑賞は、鑑賞者を巻き込んで大いに盛り上がりました。現代社会はネットを通じて様々なコンテンツを見られるし、好みの音楽をダウンロードするのも比較的安易に行われます。交通機関も発達したし、地方の文化会館も整備されてきたので、自分の好みのバンドやパフォーマーに出会うことのできる機会も多くなってきていると思います。しかし、あまり自分が興味を持っていなかった世界だけれど、出会ってみたら意外に楽しくて、また鑑賞してみたい、と思わせるのが「芸術鑑賞」という行事だと思います。そうやって、知らない世界に触れていって経験の幅を広げていくことは、10代の生徒の皆さんにとって、とても大切なことであると思っています。
自分の高校時代を思い返すと、映画館に通ってはやりの映画を鑑賞したり、お気に入りの音楽は、FM放送で流される日時をあらかじめ雑誌等でチェックして、ラジカセでエアチェックをしながら、ウォークマンなんぞで何度も繰り返し聞いていたことを思い出します。また松本市民会館(市民芸術館の前身)に有名なオーケストラがやってくることを知ると、親におこずかいをお願いして、友達とプレイガイドに並んでチケットを購入し、楽しみに出かけたものでした。ただ、現在の「芸術鑑賞」などという行事はありませんでしたので、なかなか自分の知らない世界にまで接することはできなかったように思います。ところで、この数行の単語の中に、今は無き単語たちがたくさんあることを、あらためて実感しています。
今年の芸術鑑賞は演劇の鑑賞でした。しかも劇団キャラメルボックスの劇作家でもある成井豊氏が書き下ろした作品でした。私がかつて高校演劇部の顧問をしていたころ、キャラメルボックスの作品がお気に入りで、上演ビデオをいくつか観たことを覚えています。涙と笑いと、ちょっとしたミステリーも織り込まれていて、元気をもらえる作品たちでした。当時のクラブの生徒(他校ですが)たちと共に成井さんの「銀河旋律」という作品に挑戦し、上土劇場で上演したのは、もう20年も前のことになります。
今回の作品は家族を通して、命やいじめ等に係わる重たい課題を、軽快なテンポで笑いも交えながら、一人ひとりに考えさせるような内容でした。これだけネットを通してのコンテンツが発達した時代において、生徒の皆さんにとって舞台で上演をする演劇なんて、初めて鑑賞したのではないでしょうか。しかも、大人が大人に対してガチに問いかける生の舞台なんて、これまで経験が無かったことだと思います。鑑賞した皆さんは、どのような感想を持たれたでしょうか。
6月7日(金)は学年行事の一日でした。3年生はクラス別の日帰り遠足です。富士急へ行ったクラス、名古屋港や上越の水族館に向かったクラス、あるクラスは梓水苑に行って、グランドを借りて遊びまくるなど、クラスごとに個性的な計画が進められたようです。2年生は学年クラスマッチが企画され、1年生はクラス別の交流企画と学年ウォークラリーが行われました。いずれも幹事会の腕の見せ所、準備も運営もすべて幹事会が進めます。1・2年生は行事予定表にはない、企画行事。授業を各担当の先生方にお願いしていただいて実施しているものですが、達成感を得られることはできたでしょうか。