第279号 師走における深志の探究
私事を一つ。年末というと、徐々にプレッシャーを感じ始めるのが、年賀状の準備と大みそかの除夜の鐘の準備です。後者は極めて特殊な家庭事情ではありますが、前者についても高校生で年賀状を送っている人はだんだん見かけなくなり、やがては少数派になるのでは、と感じています。しかし、それは若い世代だけではなく、我々定年を迎えつつある世代においても同様で、最近頻繁に目にするのが、年賀状仕舞のご挨拶です。友人たちから前回の年賀状に、あるいは改めて送付されたはがきに年賀状仕舞の旨が記載されているケースが目立って参りました。喪中欠礼のご挨拶状も年々増える中、今年は昨年に比較し、自分から送付する枚数が大幅に減少する見込みです。少し面倒を感じていた年末恒例の行事も、少なくなると淋しさを感じるものなのでしょうか。
【信大連携ゼミ、深志教養ゼミが終了しました】
去る12月9日(土)に、1年生対象の4回に渡る信大連携ゼミ、2年生対象の3回シリーズの深志教養ゼミがそれぞれ終了しました。現在、参加した生徒の皆さんの感想等を集約しており、それをもとに新年度に向けての修正点、改善点を検討していく予定です。信大連携ゼミにおいては、信州大学の先生方による大学のゼミを深志生対象に実施していただき、深志教養ゼミにおいては、校内外の講師の先生による専門的な学問、知識、体験を生徒に投げかけていただきます。そこには一方的な知識の提供だけではなく、1つの正解に限らない解決方法を様々な側面から探る体験があったり、協働して課題解決に向かおうとする場面が設定されていました。生徒の皆さん自身が活動する仕掛けも随所に施されており、講師の皆さんの工夫と丁寧なご準備に心より感謝申し上げたいと存じます。また信大連携ゼミの講座の中では、信大の図書館や医学部内で実施していただいているものもあり、大学で学ぶ雰囲気も味わえているのではないかと思っております。様々なご配意ありがとうございました。
【第1回長野県高校生探Qフェスティバル2023に生徒が参加して参りました】
12月16日(土)、長野県総合教育センターにおいて、県高校生探Qフェスが開催されました。探究学習推進に係る県教委事業に取り組んでいる学校の生徒の皆さんや職員が参加し、各校の事業に伴う学びの取組について、報告が行われました。この報告会には、全県から30校に及ぶ学校の生徒職員が参集し、各校の探究学習の様子や、地域との連携事業、国際連携事業の取組等が報告されました。大学の先生方や中学校の先生方、学びに係る企業の皆さんも参加しており、主催者発表で総勢300人くらいが集まったようです。また総セ内の別の会場では長野県高等学校文化連盟自然科学専門部の研究発表会も行われ、来年度第48回全国高校総合文化祭岐阜大会の自然科学部門に出場する数理研究長野県予選も行われていました。
「未来の学校構築事業」に関わる本校からも、1年生の生徒2名、探究キャリア教育部の職員1名が参加し、本校で進められている探究学習の様子等がトークセッションの形で報告されました。本校からは未来の学校構築事業と結び付いた探究学習の進め方が紹介され、そこからインスパイアされたこと、いかに失敗をレジリエンスしようとしたか、活動を通じ生じた自分の考え方の変化などが、お二人の生徒から報告されました。他校で探究を担当されている先生方も何人かおみえになっており、終了後にも次々と質問が生徒の皆さんに寄せられていました。課題や仮説の設定方法、それをどのように検証していくか、失敗にどう立ち向かうかなど、専門の先生方も含め議論が深められていきました。
私が個人的に印象に残っているのが、飯山高校の皆さんによる、北信濃におけるサバ缶文化の調査と、サバ缶を通じた町おこしの提案です。飯山高校では宇宙開発・宇宙利用についての学びがKDDIの協力により全校規模で行われており、サバ缶グループも福井県の若狭高校(JAXAに認証されたサバ缶宇宙食を考案した学校)と連携しながら学びを進めるという方向性が斬新でした。本校の生徒の皆さんを含め、発想・着眼点と新規性を重視する姿勢が生徒たちの中から芽生え始めている点に驚きを隠せませんでした。古い発想しか生まれてこない自分より、何歩も前を進んでいる高校生や先生方の様子を目の当たりにすると、そろそろ私も現場仕舞のご挨拶状を出すべきでは、という思いが頭をよぎりました。
【ホームプロジェクトコンテスト、深志高校からの応募作品が3連覇】
生活の中の諸課題解決に向けて、生徒が探究を行うホームプロジェクトコンテスト(県校長会家庭福祉部会主催)には、今年も全県から約600点の応募がありましたが、その中から市川桜さん(1-8)の作品「かけすぎている醤油を何とかしなきゃ」が最優秀作品に選ばれました。深志高校からの応募作品が最優秀賞に選ばれるのはこれで3年連続、見事学校3連覇ということになります。また永井のぞみさん(1-6)の作品「一石二鳥!?ツナ缶ランプ」が審査員特別賞を受賞しました。このコンテストは家庭や家族、身の回りに存在する課題に対し、解決手段の仮説を立て、実際に実験実証を繰り返していくというものです。そしてそこには家族や周囲の人々に対する思いやり・愛情にあふれているという点が、このコンテストのウルっと来る特徴です。(涙腺のゆるい私。)市川さんの作品は、いかによりおいしく、喜ばれながら減塩問題を解決するか、個性的な発想が光りました。また家族にとって持続可能なものとなるよう試行錯誤を繰り返している点もウルルンものでした。一方永井さんの作品は、防災の観点から、いざという時に実際に機能するツナ缶ランプを、こちらも試行錯誤しながら作成した努力に拍手を送りたいと思いました。お二方の作品とも、まだまだブラッシュアップできる要素はあるように感じますので、さらに探究を続けて商品化にまで持ち込んでみてはいかがでしょうか。