校長通信
ゆくて遥かに
校長通信

2024年12月13日

第321号 研修旅行その2と尚学塾

26回生尚学塾特別講義のご報告

 ご報告が遅れましたが、去る11月22日(金)に、26回生の8名の方々による、1年生を対象とした特別講義が行われました。8名の皆さんは、高校・大学卒業後、それぞれの分野でキャリアを積まれてきた方々で、その中で考えたこと、熱くなったこと、苦しんだこと、頑張ったこと、高校時代の学びや生活とのつながりについて語っていただきました。55分という短い時間ですので、受講者との人間関係を形成したりワークショップを行ったりする時間をとるのは難しいのですが、後輩たちの今後の人生に対して何らかの刺激が与えられるようにと、工夫をされたお話をうかがうことができました。生徒諸君も大先輩の話しではありますが、自分の将来に向けてのヒントとして、そして今考えていくべきことなどに思いを馳せながら聞いている様子でした。行政に携わってきた方、テレビ報道に携わってきた方、IT業界で新たな課題に携わってきた方、学校犬「クロ」を愛し映画製作のために奔走してきた方、エンジニアとして大企業の経営に携わった方、自分の好きな分野を徹底的に追及してきた方、ガラスの天井を打ち破るべく商品開発や販売促進に携わった方、海外で自らのスキルに磨きをかけた方など、個性的な皆さんのお話は、私にとって自分の興味関心とは別の世界のことばかりで、自分の経験知の不足を痛感する思いでした。ご講演下さったみなさま方、本当にありがとうございました。そして、26回生の皆様、ご卒業50周年、誠におめでとうございました。

世界的ブランド企業や日本の大手スーパーでコスメ系の商品開発販売のリーダーを担った佐藤京子様。しかし常にガラスの天井との戦いだったそうです。
県内最大の製造業である企業の社長、会長を歴任された碓井稔様。もともとエンジニアとして入社し、技術開発に携わってきたことが原点でした。
映画製作に携わってきた雨宮有三郎様。母校でともに暮らした「クロ」を映画化した経緯の中で、母校への思いが語られました。

2年生研修旅行報告その2

 第320号に続き、研修旅行に参加した生徒の感想文のうち、1日目の大学訪問の感想文を紹介いたします。ITやAIが世の中を変える時代であるからこそ、一方で哲学・思想、あるいは宗教といった分野が今後重視されるのではないかと感じているところですが、そんなことをあらためて感じさせる感想文をいただきました。

【早稲田大学】 2-7-6 河西 聖人

『反出生主義』

 私は早稲田大学で森岡正博先生の講義を受けることができました。それは『反出生主義』についての講義で多感な高校生ということもあって私にとっては身近なトピックでした。そこで得たことは2つです。1つ目は、『学びは何のためにあるか』です。勉強する一般的な理由は将来の選択肢を増やすとか、就職に有利だとかが挙げられますが、講義では一見同じように見えるようなことが実は違うことを理解しそれを分類できるようになれるということでした。例を出すと、ただ漠然と生きるのが嫌だなぁと考えていたところから実は生まれたくなかったんだと気づけることです。勉強することで自分の考えを整理できるようになり自分の考えがより明確になるのでパーソナリティが確立し自分に自信が持てるようになる。これから先の不確実な社会において自分自身の軸が持てるというのはアドバンテージになる。勉強の意義を知れたというのは自分にとってとても有意義な講義でした。

 2つ目は『ニーチェとの出会い』です。

 先生は反出生主義の詳しい説明の時に白いキャンパスの例を持ち出しました。キャンパスは生まれる前は何色にも染まっていない真っ白の状態だが生まれた後はそのキャンパスに個々人が自分だけの美しい絵が描いていく。しかしある部分だけ見れば軽微なミスは少なからず存在する。ミスがあるのならば真っ白の何一つミスのないキャンパスの方が綺麗なんじゃないか、というのが反出生主義の説明でした。私はここに疑問を持ちました。なぜ生まれる前にキャンパスがあるのか。そしてなぜ美しさとミスに相補性は無いのか、と。先生いわく苦痛と快楽は非対称で快楽がいくつあっても苦痛が1つでもあれば苦痛が勝ってしまうらしいですが私は困惑しました。快と苦は同価値だと考えていた私にとって考えてもなかった考えでした。新しい価値観を知れたという意味でとても興味深い経験になりましたが、やはり納得出来ず色々と洞察しながら講義を聞いていたところ、ニーチェという思想家の名前が出ました。私は公共で少し習ったことがあり何となく彼の思想について理解しているつもりでしたが教科書の中の世界だったものが現実問題として現れた時は面白さを感じました。ニーチェの考えは生まれてこないと考えている時点で生まれてきてしまっている、だから生まれてしまったこの世界、この運命を肯定的に受け止めようというものでした。これを運命愛というのですが私が思っていたのはまさにこれだ!と直観的に理解しました。自分が興味を持てる思想にたどりつけたのはこの講義の大きな収穫です。ですが流石にこの思想というのは現代には合わない、無茶な部分があるので、私は改良を施してみました。拙い考えですが、、、

 ニーチェは超人となることを人類の目標としましたがここに『忘れる』という要素が入れば現実的な域まで持って行けるかなと考えます。これは自分が忘れやすい性だからというルサンチマン的な考え方ではないです。(と思います)『忘れる』を効果的に利用するのです。無条件に意味の無いこの世界を受け入れ、今の一瞬一瞬を大切にするというのは簡単なことではありませんし、生きていると必ず過去の失態が付きまとってきます。ですがこれを忘れることが出来たら過去のミスというのは消えてなくなりキャンパスの例で例えるならミスがなくなります。なので『忘れる』というのは反出生主義に対して真正面から対抗出来る人間の唯一の力だと私は考えます。つまり忘却>苦痛>快楽の関係が成り立っているわけです。したがって苦痛よりも忘却を軸に世界をとらえるのが肝要ではないでしょうか。ここまで考えましたがまだ考えはまとまっていません。まだ整理ができてなくて知識も狭いのでこれは最初に言ったように勉強が必要そうです。こんな感じで私に考える機会をくれたこの講義はとても有意義でした!森岡先生に感謝したいです。

早稲田大学での講義の様子
都立大で研究室探訪
東大で研究室探訪
東京医科歯科大で本校の先輩方のお話を聞く

 最後に3日目の様子を写真でご紹介します。3日目は仲間との親交を深めることを目的に、希望のコースを散策しました。

お台場での一風景
ハリーポッターの世界
下町散策コースは秋葉原にて