第195号 深志高校に幸多かれ
【深志高校に幸多かれ】
令和3年度の1年間、校長ブログを不定期に発行してきましたが、退任にともない、塩野英雄からの発信は今日をもって最後とさせていただきます。ここまでご愛顧いただき感謝いたします。
振り返れば、この3月に卒業した生徒たちが、学校の発信力、とりわけ中学生への発信をホームページを通じて高めたい、との思いから始まったプロジェクトですが、校長として少しでも支援したいと考え、不定期での発行を続けてきました。生徒からは見えない学校内外の様子を少しでも伝えられればいいと思ってやってきましたが、満遍なく様子をお伝えするには時間もスペースも足りなかったことは否めません。それほど、高校生の活動は幅広く、一教員という目からだけでは見えない、そこここに素晴らしい可能性を秘めた生徒たちばかりでした。
このメッセージに惹かれたかどうかはわかりませんが、ひっきりなしに生徒たちが校長室を訪れ多くの想いを語ってくれたことは、私自身にとってかけがいの無い財産となりました。勉強のこと、部活動のこと、生徒会活動のこと、多くの意見交換から少しでも生徒たちのためになっていれば幸いです。
教育という営みはどこまでいっても終わりがなく、また唯一の正解もない行為ですが、最近流行りの言葉を借りると、個別最適な学びの連続であるとつくづく感じた1年でした。集団としてのあり様ももちろん大切ですが、個人の最適化の先に集団としての最適を目指す時代になってきていると思います。(そんなのは昔からそうだ、とお叱りを受けそうですが)
先日、本校の応援団長らが話に来て、「英雄1号」と書かれた鯉のぼりはどうしますか、と聞かれました。「ください!」と即答したのが、毎年校長の名前を入れて屋上で泳ぐ鯉のぼりです。
伝統 tradition とは難しいもので、深志高校の生徒たちは、学校の活動に深く関われば関わるほど、過去のあり様に思いを馳せる場面が多くなり、自分達の足場を固めるために過去を紐解くようになります。しかし、現在の団長の赤羽さんがいみじくも私に伝えてくれた通り、変えるべきは変えていくという姿勢を心から応援したいと思っています。
未来を見据えて、今いる生徒たちが一番充実した学校生活になるように支援していく、それが私たち大人の役目だと思っています。
先日の離任式では、キング牧師の言葉に倣って、I have a dream that one day in the future all of you here will have a fulfilling life, hand in hand with your neighbours, in this small world.と伝えました。きな臭い世の中ですが、ちっぽけな人間がいがみ合っている世界ではなく、個人のそして世の中のwell-beingにつながる行動をこれからもしていきたいと思っています。
(終業式での話の概要は以下から)
私自身は電車と徒歩で通勤していました。生徒も使う通学路の道端には、昨年も迎えてくれた紫色のムスカリの花が咲き始めていました。
3月になると、小学校に入学する新1年生が通学路を親と一緒に学校まで歩いてみる姿をよく目にしますが、深志高校への通学路にあるムスカリの花の傍を、デイバッグを背負った女の子が親と一緒に駅から深志高校まで歩いてみている姿がありました。父親と思わしき方が、道すがらいろいろな場所を指しては娘さんに説明しながら坂道を登っていく姿を目にして、微笑ましく思えたのと同時に、これからはじまる高校生活に幸多かれと祈ったものでした。
(完)