第181号 定時制のこと
【定時制のこと】
松本深志高校にも夜間定時制の生徒が学んでいたことを知らない方もいるかもしれません。
昭和48年(1973年)3月の閉課程まで50年間、本校には定時制課程がありました。大正末期の松本夜間中学校に始まり、年度により差はありますが昭和期は毎年500名前後の在籍者がおり、これまで3000名近い卒業生を送り出してきました。
学校設置の基本を定めた学校教育法において、高校には「全日制」「定時制」「通信制」を置くことができるとされ、修業年限は全日制が3年、定時制・通信制が3年以上と定められています。
令和元年の資料では、全国の高校の84.1%が全日制、 11.4%が定時制、 4.5%が通信制となっています。生徒数では、全日制が91.7%、定時制が 2.4%、通信制が 5.9%を占めており、定時制の生徒減少に対して、通信制の生徒数がここ数年非常に増えているのが全国の状況です。
長野県も同様の傾向があり、通信制の増加はここ数年の特徴となっています。
長野県の定時制通信制教育振興会長を長年務めてこられた「井上保さん」(深志13回卒、前同窓会長、井上代表取締役)は、定時制・通信制教育に寄せる思いを次のように話しておられます。
「私が深志高校に通学していた頃は深志定時制もあり、当時は文字通り働きながら学ぶと言った定時制から、現在は一度は挫折を味わった生徒(不登校、小中高でのいじめから)が多いと思います。
しかし、私達(教育振興会)は、彼等の何とかもう一度勉強したい、高校だけは卒業したいという思いにいつも心が打たれます。年1回、彼等の生活体験発表会では、いい年をした大人(私達)が、涙するのも毎回の事です。
なお、深志定時制のOB会には蛍雪会があり、勿論ほとんどの人が私より先輩であります。先輩の方々の当時の向学心や、高邁な生き方にはいつも心からリスペクトしております。」
戦後、働きながら学ぶ勤労青年のために制度化され、高校教育の普及と教育の機会均等を実現する上で大きな役割を果たしてきた定時制課程ですが、最近は、転入学・編入学者や、中学校までの不登校経験者など、様々な入学動機や学習歴を持つ者が多くなっています。自分のペースで学べるので、学び直しの機会の提供や自立支援等の面でも大きく期待されています。
かつて、私が県内の夜間定時制高校に勤務していた時、様々な困難を抱えながらもじっくりと学びを深め一生懸命学習する姿、時々アルバイト先で出会うときに見せるはにかんだ姿、そして最終的に進路を定めて4年間で卒業していく生徒の姿に感動を覚え、エールを送ったものです。
全日制でも定時制でも生徒の学びの場を保障することが大人の使命であり、さらに学びの場は高校や大学などの学校だけにとどまらない時代になっています。卒業して社会に出てからも学び続ける、その基礎を養うのが高校の役目だと感じています。
「人生、常に学び続けていきたい」今いる深志高校の生徒たちの中にそういう心が息づいてほしい、そんなことを考えています。
なお、深志高校同窓会は全日制、定時制が一本化され、名簿の管理等も全日制と一緒に深志同窓会が扱っています。
(以下、関連するサイトです。)
「深志高校同窓会HP」
https://www.fukashi-alumni.org
「定時制課程・通信制課程の現状について(文部科学省 令和2年5月21日)」
https://www.mext.go.jp/content/20200522-mxt_koukou02-000007159_32.pdf
「長野県高等学校要覧」(年度ごと。小中学校版もあります。)
https://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/koko/gyose/zenpan/tokei/ko/koukouyouran.html
(English version below)
Our school used to have a night course for fifty years apart from a regular day course, from 1924 till 1973 with approximately 3,000 graduates.
According to the survey by the Ministry, 91.7% of high school students in Japan go to schools with a day course, 2.4% go to those with a night course, and 5.9% go to those with a correspondence course. Recently more and more students go to high schools with a correspondence course, accordingly less number of students studying at a night course.
Mr. Inoue Tamotsu, former president of the alumni reunion, who for long has been the head of the development organization for high schools with a night course and a correspondence course, comments as follows;
“When I was a student at Fukashi, there was a night school attached where students worked in the daytime and studied in the evening. I know many night school students these days have once suffered a setback like balking at going to school. I am deeply touched by the words of those students who tell us that they want to study again and graduate from high school at any cost. I always shed tears when I listen to the speeches by those positive students on their presentation day.”
When I worked at a school with a night course, I was also moved to see the students study hard at school, work part-time in towns, and finally get a job and graduate from school.
I hope that the students working now at Fukashi will reaffirm the continued importance of learning at school and for the rest of their life as well.